Vol.102  クジラ、サンマで令和新食材

どんな料理にも利用できる鯨肉

 今年は5月から通年操業のサンマ漁がスタートし、7月からは商業捕鯨が再開するなど、令和元年にふさわしく、新たな動きが出てきた。鯨肉のおいしい食べ方や健康機能性を築地場外のクジラ料理専門店「鯨の登美粋」の松本宏一代表に話を聞いたほか、通年操業サンマの動向を紹介する。

調理法や食べ方紹介【クジラ】

松本代表

 7月から31年ぶりに日本の沿岸と排他的経済水域内(EEZ)で商業捕鯨が再開した。これまで鯨類調査の副産物が国内で流通していたが、商業捕鯨に切り替わったことで捕獲後の下処理なども可能になり、よりおいしさを重視した品質のよい鯨肉が提供されると期待が高まっている。日本沿岸で捕獲されるミンククジラは、船上で血抜きと一次処理を施すことで鮮度のよい生ミンクを提供。凍結処理していないのでもっちりとした繊細な肉のうま味があり、刺身などでもおいしさは格別だ。EEZ内の母船式も品質が向上する。

 鯨肉で一般的に食べる機会が多いのは赤肉や皮、ベーコンだろう。本皮の調理のポイントは「薄くそぎ切りにする場合は冷凍のまま2ミリぐらいの厚さなら解凍してから切ってもよい」と松本代表。

 赤肉の調理のポイントは「0度Cに近い温度帯の冷蔵庫で、とにかく時間をかけてじっくり解凍すること。解凍が命」という。赤肉は火を加える際にさらにポイントがある。ステーキのような焼きの場合は表面をきちんと焼き、中に火を通しすぎないこと。竜田揚げやカツも少しレア感が残るぐらいにとどめた方が軟らかさが残り、鯨肉本来の味が楽しめる。下味は「クジラといえばニンニクを挙げる人が多いが、きちんとした解凍ができていればショウガで十分」という。

クジラ料理の一例

 商業捕鯨になり供給量が増える見込みのニタリクジラは味にクセがあり消費者受けしないのではないかと不安視する声もあるが、「ニタリはクジラのうま味が強い鯨種。きちんとした下処理をし、素材に合う薬味を合わせれば問題ない。むしろ素材のおいしさを引き出しておいしく提供していくことこそ、料理人の腕の見せどころ」と今後の提供に意欲的だ。鯨肉は国産だけでなく、アイスランドとノルウェー産も輸入されており、それぞれ特徴が違う。

 鯨肉の販売にあたり松本代表は「部位や産地、どのぐらいのランクのものなのか、きちんと表示をしていくべきだ」と提案する。「肉は等級が付いているので大体の品質と相場が分かる。何の表示もなく安い値段でおいしくないものを提供してしまっては、鯨肉全体の消費に影響が出る」と警鐘を鳴らす。また「昔からある食材ではあるが、調理の基本やレシピなどきちんとした知識のある人はほとんどいないのが現状。基本的なことをきちんと説明しながら販売していく必要がある。これは業界挙げて取り組まなければならない。当たり前のことをやらないと消費拡大はできない」と、流通や業界が総力を挙げ取り組むことを切望している。

 同店は「くじられしぴ」(www.kujira-recipe.com/)で調理法などを紹介している。

 また鯨肉は「高タンパク」「低カロリー」「鉄分豊富」と健康機能性もばっちり。さらにオメガ3脂肪酸やアミノ酸も豊富に含み、ダイエットや抗疲労、認知症予防などの効果も期待されている。

令和初物ほろ苦デビュー【「通年操業サンマ」1年目】

よりすぐったサンマはよく見えたが…

 もう一つの令和時代の新商材として注目された「通年操業サンマ」(本操業前に公海域で漁獲された生サンマ)は、5月29日の初水揚げこそ注目を浴びたものの、その後の評価は伸び悩んで、ほろ苦デビューとなった。

 大手量販で売られた初物の一部は、手選別で大ぶりの魚が選ばれたため見栄えした。ただ、ほとんどが細く脂のない魚。好材料は虫付きが予想より目立たなかったことくらいだった。同じ公海でも6月下旬に近場で獲れた魚の評価は悪くなかったため、来年以降の評価も漁場次第といえそうだ。

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