Vol.48  おいしさを数値化/選択しやすく、売り上げ伸ばす

味覚センサーの説明をする早坂部長

味覚センサーの説明をする早坂部長

 口に入れた瞬間「これはおいしい」と人は瞬時に味を感じるが、それを数値化し、販売にも生かそうとする動きがにわかに活発化している。さまざまな食品が登場する中、商品の特徴を分かりやすく示すことで、消費者の選択を簡単にし、より積極的なアピールになると注目されている。

 味覚センサーを使い、基本5味(甘み、酸味、塩味、苦味、うま味)の構成などから科学的な商品特徴の割り出しや、商品開発などのコンサルティング業務のほか、科学分析を基にした食品のトレンド情報などを提供している「味香り戦略研究所」の早坂浩史研究開発部長に話を聞いた。

選択しやすく、売り上げ伸ばす

数値に合った言葉でより選びやすく。ワイン売り場の展開例

数値に合った言葉でより選びやすく。ワイン売り場の展開例

 「人がおいしいと感じることを主観から客観性をもたせることで、消費者に一つの選択肢を提供することになる。食品売場を見ていると、商品が多いため消費者は選択にかなりの時間を割いていることが分かる。この部分も解消していきたい」(早坂部長)と、味覚センサーを活用した調査の意義を話す。

 味覚分析の世界で、ここ数年ニーズに変化が起こっているという。

 「これまで自社製品の分析に役立てるケースが多かったが、最近では(生鮮品の)原料分析のニーズも多く、素材の持ち味を分析し、よりおいしく感じる調味料を探ったり、肉などは飼料により味にどのような変化が出るのか調査するケースが増えてきた」と、素材の可能性を広げるための調査が増加傾向にあるという。魚であれば水揚げされる地域や下処理次第で、持ち味が違ってくる。

 例えば、皮付きであれば身の間に脂があるので、皮なしよりうま味や甘みも感じやすく、加える調味料や適した調理方法も違ってくる。そこを数値化し、具体的に加える味や調理法を提案していく。

棚づくりにも一石を投じる

チラシの右上には味覚センサーの説明も

チラシの右上には味覚センサーの説明も

 売場でも新たな販売戦略にひと役買っている。

 小売店からの要望で、これまでメーカーごとに並べていたドレッシングを酸味の強さなどの味覚の方向性をチャート表感覚で商品を並べ替えることで、以前より売り上げを3割以上伸ばした。

 商品が味の特徴別に並んでいるので、消費者は自分がこれまで購入した商品の近くにあるものを買えば、これまでと味の方向性を大きく変えず、新しい商品にチャレンジできる。さらに対極にある商品を買えば、今までとは正反対の味であることを理解して購入できる。

 早坂部長は「売場では数値を表示するのではなく、数値に合った言葉で表現していくことが大切になる。これまでおいしさを表現する言葉は少なかったが、より消費者がイメージしやすい表現も考えていきたい」という。ワイン売場では味覚センサーで分析した味をもとに、「濃くてリッチ」や「クリアで繊細」などの言葉で表現している。

 さらに横並びになりがちな、塩辛売場でも最近センサーを用いた売場作りが始まっている。「味が濃いめなので、この商品はおつまみ向きやご飯向きなど、売場に表示し、利用シーンをイメージしやすくすることで購入につながっている」(同)という。塩辛以外の水産加工品でも同様の取り組みは可能だ。

 最近増えてきた減塩商品の開発現場でもその分析力が生かされ始めており、水産物販売でも大いにその活用が期待される。

数値を“見える化” マルトモ

同社の「枕崎かつおつゆ」のポジショニングを明確に

同社の「枕崎かつおつゆ」のポジショニングを明確に

 マルトモの味覚センサー導入は十数年前からと実はかなり早い。客観的なデータを取るためにと機器の導入を行い、自社製品のうま味など他社との違いを比較しながらポジショニングして数値を“見える化”させ、それを営業ツールとして使用してきた。小売関係者からは「具体的で分かりやすい」と、プレゼンではいまや必須のツールの一つになっている。「最近ではこういう味付けにしてほしいというお客さまの要望もあり、味覚センサーはフル稼働」だそうだ。

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