Vol.38  鮮魚流通の「Amazon.com」へ、IT技術で24時間体制の受注

iPadの画面で、商品の商材情報を確認し、注文できる

 「おいしい魚を届けたい」─水産物流通分野で、IT技術を活用した新しい取り組みが進んでいる。

 流通分野で、魚を食べる人や食べる量を増やすためにできることは、「おいしい魚を届け、おいしい食べ方を伝えること」に集約される。

 水産業界の中から、そしてIT業界から、着手している新たな挑戦を紹介する。

売り上げ増大、サービスに重点?八面六臂(株)

納品先の要望に応じて、丸の魚や半身などに対応する

  「鮮魚流通のアマゾン・ドット・コムを目指している。ITを活用し、『顧客視点のサービス』をいちばんに考えた鮮魚流通を実現していく」と語るのは、鮮魚に特化した水産卸販売業を営む八面六臂(株)の松田雅也社長。同社は、鮮魚流通分野の情報と受発注プラットフォーム・システム「八面六臂」を開発し、同システムを通じて24時間体制で注文を受け付ける。

 「八面六臂」を「おいしい魚を食べる幸せを提供する」ためのツールと位置付け、すべての顧客に「八面六臂」アプリを導入したiPadを無償貸与。鮮魚情報と受注情報を最先端システムを駆使して高速に最適処理し、顧客サービスに役立てている。

 顧客は「マイページ」を有し、アマゾン同様、過去の発注履歴を見るほか、膨大な商品の中から、「この商品を見た人はこんな商品も見ています」という、発注履歴の分析に基づく別商品の提案も受けられる。

 商品種別や産地で検索したり、手書き入力で「いつものアジ5本」と注文するのも可能だ。

 鮮魚は、漁業者や産地市場、築地市場など全国各地から仕入れ、「産直」にこだわり過ぎず、「おいしさと鮮度」にこだわり、なおかつ飲食店が要望する安定供給に対応できる体制を整えている。現在、首都圏の飲食店300店超に、魚の半身1枚からでも、望まれる量と形態で、希望の時間帯に配送する。値引きは一切しないが、「おいしさ」に価値を置く取引先は増える一方だ。

 松田社長は「最終目標は、取引先に魚を売ることではなく、その先にいる消費者に食べてもらうこと」と力強く語る。費用削減ではなく、売り上げ増大に向けたサービスの提供に重点を置き、メニュー開発や提案、販促グッズの制作や提供も実施。「魚の消費が減った要因の一つに、おいしさよりも価格が優先されてきたことがあると思う。当社は、おいしいものを食べたいと思って飲食店を訪れるお客さんのニーズを満たす、おいしい魚をきちんと送り出す仕組みを提供していく」。と、日々、産地や消費地を奔走する。

ネットの取引情報を集約

サイトを介して接点のなかった川上と川下をつなぐ。国産水産物の消費拡大を後押しする

 ネット上でできる水産物取引は拡大しているものの、その情報はいまだ玉石混交。目当ての魚を即座に探すのは厳しい状況にある。そんな中で昨年末、国産水産物の取引情報を整理・集約して紹介する「水産流通ポータルサイト」の運用が始まった。登録は無料。事業者数は100を超えた。

 業務用食材の販路を広げたい川上(生産者・流通業者)の取引情報を、地域・魚種・日にちで検索を可能にし、川下(バイヤーなど)に提供する。水産物取引に有用な関連情報も満載。商談(ビジネスマッチング)する機会を増やし、国産水産物流通の目詰まりをなくす。

 サイト管理者である漁業情報サービスセンター(JAFIC)によると、「自社サイトの閲覧数や商談の増加、居酒屋と新規取引が始まるなどといった効果が出ている」という。今後は「情報の量と質を高め、川下に定期的に見てもらえるサイトにしたい」などと話している。

 同サイトは、水産庁の補助事業「国産水産物流通促進事業」の一環で運用。ページ作成はJAFICが担当し、情報の更新は付与されるIDやパスワードを用いて自社で簡単に行える。

 ホームページのなかった漁協・水産会社からは、「ネットの情報発信の足掛かりになる」と喜ばれている。

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