Vol.31  富山独自のコンブ文化、魚食を増やすヒント

ショップの品揃えはコンブと、コンブを用いた関連商品が主役となっている

 料理のダシをとるのに便利で、食べてもおいしいコンブ。そのコンブの養殖生産量の日本一は圧倒的に北海道だが、地元の生産量が皆無にもかかわらず、消費量でダントツ日本一の県がある。それが富山県だ。

 同県は、魚の消費量も全国で五指に入るが、そのことはコンブの消費が日本一多いことと関係は浅くない。今月は、首都圏で存在感を増す富山独自のコンブ文化に着目。魚食を増やすヒントを探るため、東京都内のアンテナショップ「いきいき富山館」を訪ねた。

消費・日本一!富山に学ぶ活用術

「昆布締め」刺身を手に解説する河西館長。県外販売用に中が見えるよう工夫した品も

 「買ってきた魚の刺身を食べきれず余らせてしまった場合、富山の多くの家庭ではほとんど『昆布締め』にする」と紹介するのは、「いきいき富山館」の河西隆喜館長だ。

 「昆布締め」は、刺身をコンブで挟み込んでひと晩寝かせる処理。今は全国的にもそう珍しくはないが、そもそもの「昆布締め」のルーツを追うと富山にたどり着く。富山の食卓では本当に「昆布締め」が多用される。コンブのもつうま味や風味が魚の身に移り、適度に脱水する効果もある。

 「プリプリの歯応えがしっとり食感に変化し、身色も違ってくる。日持ちもするし、醤油もほとんど付けずそのまま食べられる」と、全く新しい食べ物に変身する。コンブによって、同じ食材が違った顔をみせるのだ。

 食品保存容器に入ったとろろコンブ(数百枚に重ねて側面を機械で削って薄皮状にしたコンブ)が、調味料と一緒に備え付けられているのは、富山の家庭では当たり前の風景。

 北海道と大阪を結ぶ北前船の中継地としてコンブ文化が根付き、1000年単位で育まれてきた土地柄である。「小さいころにガム代わりで噛む」ほど身近にあったくらいだから、魚だけでなく肉や山菜などとも自然に結びついて、富山の食文化を非常に豊かにしてきた。

人気沸騰中の「富山の昆布パン」

 富山の代表的な特産品の一つに、スリ身の整形に使う板の代わりにコンブを敷き、くるりと巻いた「昆布巻きカマボコ」があるが、コンブとの融合から生まれた最古の水産加工品の一つといえよう。

 「いきいき富山館」の案内人である大谷洋子物産・地酒アドバイザーをしても、「成り立ちが分からないくらい昔からある」という。富山のコンビニでは当たり前のように見るが全国区ではない、とろろコンブで包んだおにぎりも特徴的な一品。最近は「パンにコンブを練り込んだ『昆布パン』がヒット中」と、洋風食材とも相性がよい。

実にシンプル、相手も選ばず

特産「昆布巻きカマボコ」。コンブの粘りの素、フコイダンのヘルシー効果も見逃せない

 コンブは「実にシンプル」ながら、さまざまな食材で融合を果たし、富山の食を彩ってきた。その中で、中心的な食材であった魚の消費を底支えしてきた功績も大きい。

 刺身やカマボコだけではない。最近では、とろろコンブが目印の「富山おでん」や、郷土料理の鱒寿司(サクラマスを酢で味付けした押し寿司)をコンブで包んだ新製品が注目を浴びている。富山県のコンブは、今なお現在進行形で新しい食を生み出し続けている。

 日々頭を悩ませる水産の品揃えやレシピの提案。それを一歩深めて種類を豊富にするため、全国で最も進化した富山のコンブ活用術に、学ぶ点はたくさんありそうだ。

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