Vol.56  制定から10度目の「魚の日」目利きの関心、魚食につなぐ

26年築地市場まつり内の大物業会冷マグロ解体ショーの様子。築地の注目度は観客の数は一目瞭然

26年築地市場まつり内の大物業会冷マグロ解体ショーの様子。築地の注目度は観客の数は一目瞭然

 国内で消費される水産物の過半数が流通する卸売市場。そこで働く水産仲卸の全国団体(全国水産物卸組合連合会)が、衰退する魚食文化を守ろうと10月10日を「魚(とと)の日」と定め、組織的に魚食普及活動を始めて10年近くがたった。来月、制定から10度目の「魚の日」を迎える。水産仲卸の魚食普及の最前線を追うため、東京・築地市場を訪ねた。

築地仲卸、取材対応約300件

過去の「魚の日」に行われた学校給食イベント。今後は通年の活動で取り組む

過去の「魚の日」に行われた学校給食イベント。今後は通年の活動で取り組む

 築地の水産仲卸600社強が所属する、東京魚市場卸協同組合(東卸)に寄せられるメディアからの取材依頼件数は、年間400件に上る。平成26年度はそのうち「魚食普及に寄与する」ことを条件に約300件を受けた。開場日を考えると、一日1件を超えるペースだ。

 メディアの目は今、築地、中でも水産仲卸に集中している。東卸広報文化委員会委員長の島津修常務理事は、「『ロケーション(立地)』『築地イコール魚の街というイメージ』『(水産仲卸の)目利き』の3つがメディアの関心を引いている」と感じている。

 特に今年は「目利き」の取材が急増した。将来的に組合事業化できるかの可能性を探るために海外輸出の市場調査をした「築地(東卸)国際化プロジェクト」が、NHKのニュース番組で「目利き」とは何かを掘り下げるスタイルで取り上げたことがきっかけだった。

 「目利き」は、卸売市場制度の誕生当時から存在している市場の基本機能だ。入荷する魚を単に見分けるだけでなく、異なるニーズをもつお客さまが求める魚を、適切にお勧めするのが「目利き」の役目。そのチェックが効いているからこそ、買出人それぞれが求める「安全・安心」で「適切な」品質の魚が入手できる。
 近年、卸売市場を通さない方がメリットが大きいと、半ば常識のように語られてきたが、実際に計算するとコストダウンの効果はほぼない。そのうえ「目利き」を介さず手にした魚が、期待した品質を裏切ることが繰り返され、少なからず魚離れの原因ともなってきた。

 「『目利き』機能が注目され、卸売市場が見直されていくことにつながればいい。適切な品質のものが消費者に届くようになれば魚消費も増えるはず。将来的に東京五輪まではPRの絶好のチャンス」と、少なくとも数年はメディア取材に対して積極的に協力し、卸売市場の認知度を高めることで魚食普及に貢献する。

新事業準備する東卸

 メディア対応による受け身的な魚食普及だけでなく、東卸の広報文化委員会では今、来月10日の「魚の日」を「新たな活動の第一歩にしよう」(島津常務)と、魚食普及新事業をスタートする準備作業を進めている。

 学校給食へ本当においしい魚を提供する取り組みと出前授業をセットにした「給食授業」と、移転間近な築地の市場見学と冷蔵庫体験ができる「カウントダウン築地市場体験会」開催などが主な内容だ。「給食授業」は各季節に1度、「カウントダウン築地市場体験会」は月に1度行う予定。

 「『魚の日』単発のイベントは、その日は盛り上がっても、一発限りの打ち上げ花火に終わる危険も少なからずあった。今後は魚食普及を継続的活動として通年行っていき、その集大成イベントとして『魚の日』を使うという形にしたい」と島津常務は熱っぽく語る。

島津常務の魚食普及活動のコツ-「おいしい」体験がキモ

東卸広報文化委員会委員長の島津修常務理事

東卸広報文化委員会委員長の島津修常務理事

 食べて「おいしい」と感じてもらう体験は絶対に外せない。予算や効率を多少度外視してでも、「おいしい」魚を食べさせる機会をつくるべきだ。

 「おいしい」と感じる体験は、味覚よりもむしろ情報(シチュエーション)で決まる割合が大きい。極端にいうと、「おいしい」の7ー8割は情報で決まる。大人は、昔ながらの魚市場に触れる目的で築地に観光に来るが、傍らの子供が魚市場の雰囲気(加工作業に伴う汚れ、湿り気、臭い)を嫌がっていることも珍しくない。味を感じる前に魚食に悪い印象を抱いてしまうことさえある。

 子供たちへの魚食普及には無理強いは禁物。魚に触るのを嫌がる子供の手を取って無理に触れさせたり、食べ残した子供に完食を強いたりするのは逆効果。こちらの思いの押し付けはNGだ。

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