Vol.15  “内地”に海産魚を売り込め

 四方を海に囲まれ、海岸線の総延長は世界6位を誇る日本だが、国民のすべてが海沿いに住んでいるわけではない。コールドチェーンの発達に合わせ、産地以外での鮮魚普及は著しいが、内陸域の人口を考えると、伸びしろはまだまだ大きいはず。海のない土地でいかに鮮魚消費を増やすか。その可能性を探ってみた。

内陸走る県産魚の定期便/ホッケ人気にマッチングの妙

内陸県での量販店の販売の様子。群馬や長野だけでなく、岐阜などにも石川県産魚は出回っている

 平成26年度に迫った北陸新幹線の金沢駅開業を見据え、JFいしかわ(小川栄組合長)は、沿線となる群馬県や長野県などに対して今、地場で獲れた新鮮な鮮魚を送り込んでいる。23年度には群馬県の有力量販店チェーンに週に1度、4トントラックの定期便が走った。

 JFいしかわ・かなざわ総合市場の企画流通課油谷安弘課長代理は、「バイヤーが金曜夜に金沢入りし、魚を選ぶ。今までに多い時は350ケースを持っていったね」と話す。品目は大衆魚に限らない。内陸県になじみのない石川名産のアマエビや活ズワイガニも人気の魚種だ。中には「揚がったら必ずほしいと指定されている魚もある」。ホッケがそれで、惣菜品として売場に並ぶ。従来は一般的な北海道産だったが、量販店の競合他社とは違った産地から、しかも従来よりも高鮮度なホッケが手に入るとあって、非常に好評だ。

 このように地場で注目度が低くとも、内陸県でみればまた違う。偶然から生まれるマッチングの妙も面白さの1つだ。

22年度のBCリーグ遠征時のPRイベント

 消費者からの評判も上々のよう。担当バイヤーからも、「従来は仕入れが難しかった高鮮度な魚が手に入ることはもちろん、首都圏市場にはない魚もある」と喜ばれた。今後は「味付け、センターカット、切身加工のようなひと工夫を施した出荷体制も整えたい」(?ジェファ・岡本徹業務課課長)と、JFいしかわグループ全体で、さらなる事業展開を思い描く。

 22年度は、長野県で大手量販店と組んで「石川物産フェア」を定期的に開催した。県の補助事業を活用したこの取り組みは単年度限りで終わったものの、現在も当時築いたノウハウが生きる。「大漁時、JFいしかわから4トン車を走らせ、納品することもしばしば。浜値を下支えし、漁業者の手取りアップに貢献している」と説明している。

 また、プロ野球独立リーグのBCリーグ(ベースボール・チャレンジ・リーグ)で、地元チームの石川ミリオンスターズとともに長野と群馬に遠征も経験。スタジアムの脇で、アマエビの唐揚げとサザエの炊き込みご飯を試食に振る舞った。内陸県で新たな食習慣を広げるには地道な啓蒙が必要となるが、地元密着型のスポーツイベントの活用も効果的な手法だろう。

内地こそ正攻法

「おいしさ」で生鮮商材の購買意欲を育てる

 福島県会津盆地で伊藤春彦さんが鮮魚店を始めたのが5年前。太平洋と日本海の中央に位置する内陸地はかつて、魚といえば塩干品だったが、近年では量販店でも刺身が並ぶ。とはいえ歴史は浅い。伊藤さんはこの点を突く。「過去を知らない分、余計な偏見がない」ため、品質の高い養殖魚が売りやすいそうだ。

 「安かろう?」で失敗した沿岸地の轍を踏んではならない。魚食文化が薄い内陸地域こそ、「おいしいものが売れる」正攻法が成功のカギかもしれない。

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