Vol.14  ニーズの“すれ違い”なくせ!!/鮮魚のあるべき売り方

 水産物が有するそれぞれの“売り”と“消費者ニーズ”の間に生じた「すれ違い」。仕入れたものと欲しいものが異なるこのズレは、埋まるどころかさらにひどくなり、魚食普及の障害となっている。多様化する日本人のライフスタイルを追跡しきれず、一般的な都市部の鮮魚売場は、アジ・サバ・イカといった人気大衆魚に走り、輸入魚で大量製造した加工品に依存してきた。結果として味よりも見た目が優先され、過度の価格競争で、魚消費は減り続ける悪循環にある。日々この両者の「すれ違い」を解消する努力を重ねている小売を訪ね、鮮魚のあるべき売り方を再度見つめ直す。

[角上魚類] 買う楽しみと買いやすさ

高鮮度の魚がぎっしり並ぶ売場。仕入れた魚はその日のうちに売り切る

 “日本一の魚屋”を目標に、年々売り上げを伸ばす角上魚類。魚を自ら調理しないと言われる若年層や男性客が活気ある店内を巡る姿も、同社の店舗ではよく見かける光景だ。

 「鮮度を最も重視している。魚を翌日に持ち越さず、仕入れたものはその日のうちに捌くことが基本」(江田勉小平店店長)と、新潟の本店をはじめ、全店舗で共通した鮮度管理の意識をもち、徹底した品質管理で顧客をつかんでいる。

 対面コーナーでは新鮮な魚が並び、食べ方や魚の知識を直接、お客と対話しながら行う、魚屋ならではの販売が行われている。「魚は鮮度が命。見た目のおいしさも購買に大きく影響する。対面コーナーで動きのよくないものはすぐに刺身や寿司などに加工し、鮮度のよい状態のまま提供している。社員一人ひとりが魚の知識や調理方法などを勉強し、お客さまときちんと話ができることも大切なこと」という。

 プロの感覚だけに頼らず、商品ごとに売れた時間や数量などをデータで管理し、ピンポイントで売れる魚を店頭に並べるのも鮮度管理の一環だ。

 豊富な品揃えも同社の特徴。小平店では1000品以上の魚介類を常時販売していて、「買う楽しみを常にもっていただけるよう、珍しい魚種も揃えている。試食も普段食べる機会の少ないものを出す」と、お客が好奇心をもって買い物ができる環境をつくり上げている。「品揃えに加えて、一点約400円という買いやすい値段もポイントになっている」と言う。

[サカガミ] 直筆POPで生情報充実

直筆POPの例。春先はスーパーでは珍しい貝の刺身で品揃えでも差別化

 日々の買い物が楽しくなる売場づくりを目指すスーパーサカガミ(本社・東京豊島区)は、売場担当者のメッセージを買い物客に伝える直筆POPで、見た目や価格だけではない情報を伝えている。社員とパート間の区別なく、売場に入った人間が率直な気持ちで書き込んだPOPは、既成の無味乾燥な販促ツールにはない温かみのある印象を与える。店を離れた一買い物客という立場から、「思わず買いたくなるひと言」(藤原義弘駒込店副店長)を記す。各店ごとのアレンジが、売場に彩(いろどり)を添えている。

 また、店を訪れる年齢層や料理スキルの傾向をみて、売場をこまめに変えている。「平日の午前中は、料理に時間を割ける主婦の方が多い」と、料理に手間がかかる丸魚などを中心に置く。最近の若い主婦に人気のオイル漬といったこだわり惣菜物も、この時間帯に多めに並べる。逆に「平日の夕方や週末には、料理する時間の取れない親子連れが多くなる」と、焼いたり煮たりするだけの加工済み魚、レンジ調理品、刺身類を中心に揃える。お客の欲しいものを敏感に察し、他店と同じ魚でも販売形態の主役を変えて魚の消費を促す。

 土曜など来客が増える日は「築地祭り」といったイベントを企画し、顧客を一層楽しませる。店側の変化のつけ方一つでニーズの「すれ違い」は格段に狭まる。

「存在感を出す」 その気にさせる売場づくりへ

 「ハレの日のイベント時は、売場を思い切り盛り上げて、消費者をその気にさせることが大事」と語るのは、簡易食品容器メーカー・(株)エフピコ容器開発部の横山和典ジェネラルマネージャー。容器メーカーの視点から休・祭日を意識した売場づくりを提案する。

 休日は、売場で見つけやすいように見た目に変化をつけることと、ぱっと見て、「おいしそう」と感じさせ、商品の調理法や味をイメージできる演出をすることがポイントという。

 刺身を例にとると、盛り付け点数を増やしたり、容量を大型化したりするのではなく、円形や扇形などの形を用いたり、黒地に金や赤が入った華やかな彩りの容器に盛り付けることで、消費者の視覚に訴える。

 容器のまま食卓に乗せた時に存在感が感じられ、消費者が「特別な雰囲気」を感じられることが一つのキーとなりそうだ。

魚種でなく料理で提案 マイスター草の根活動
横浜丸魚鮮魚部部長 北岸栄二執行役員に聞く

 魚が人間側の都合で揚がってくれれば、売る側にとってこれほど楽なことはない。しかし、横浜丸魚の北岸栄二執行役員は「天然魚は自然のもの。コントロールして集荷はできない」と苦笑する。「特に近年は旬の時期がズレている」。各地から揚がった鮮度のよい魚を小売店に送り込む。水産物はまずそこから始まる。

 したがって流通の段階でできるのは、魚種の提案ではなく料理提案だ。「平日なら、焼き魚、煮魚、フライの単品物。週末なら刺身」。水産物を料理からとらえれば、それらに向いた何かの魚種が最低一つあれば提案できる。一方で、近年は技術の進歩で、品質が大幅に良化した養殖魚ならば、天然には難しい「人間の都合に合わせた提案に応じる」下地がある。

 ただ現在は、消費者の基本的な料理技術すら危うくなっている。これを防ぐことが緊急に取り組まねばならない課題だ。水産卸では最大の12人を抱える横浜丸魚グループのおさかなマイスターらが月に一度、市内のイベントに出向いて、旬の魚の食べ方や料理を教えている。「中核都市・横浜は周辺から人が集まる。たとえ小規模でも、私たちの活動を見た人が各地に戻って料理に挑み、口コミで少しずつ広がれば」と願い、今後も草の根活動を続ける。

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