Vol.57  うまさ飲み干す、ヒレ酒・骨酒

ウマヅラハギ

ウマヅラハギ

 寒さ増し、熱燗(かん)がおいしくなるこれからの季節。「ヒレ酒」「骨酒」と聞けば、ちょっと贅(ぜい)沢な気持ちで心躍るーーのは、おじさんの証拠か。いや、魚の個性を楽しむならば、実はヒレ酒・骨酒がぴったり。魚種は問わず。最適な巡り合わせを求め、魚を捌いて作って飲んで、何が好みか、仲間とワイワイ。魚と冬を満喫しよう。

個性を楽しむヒレ酒・骨酒

カジカ(中骨と胸ビレ・カマ)

カジカ(中骨と胸ビレ・カマ)

 ヒレ酒と聞いて、真っ先に思い浮かぶのがフグだろう。乾燥させた尾ビレや胸ビレをさっと炙(あぶ)って熱燗へ。特有の香りが移り、心も体も温かくする。

 骨酒といえば岩名酒が有名か。丸ごと焼いたイワナをそのまま酒へ漬けて飲む。野趣あふれるダシは、ある種スープのような味わいだ。

 ところが、魚種や使用する部位が変われば、味は幾多にも変化する。千葉・浦安市の天ぷら屋「天悟(てんさと)」では、釣り好きな店主が、天ぷら種用に魚を捌いた端材であれこれと、遊び心で試すうち、「こんな味があったのか」と、魚通をも笑顔にさせるヒレ酒・骨酒へと、昇華させていった。

強烈 サンマの骨酒

 フグやイワナだけがうまいわけでない。意外にも青魚は、強烈で分かりやすい。中でも、サンマの中骨で作る骨酒は、脂がたっぷり乗った肉に感じる味わいが、あふれんばかりに酒へと移る。干して焼く過程で魚臭さ、脂臭さはなし。食べ慣れた魚だが、塩焼きやツミレ汁では経験し得ない、ダシの奥深さを体感できる。

 白身魚は魚種ごとの香りの奥に、品のよい甘みを感じる。最初は軽い風味でも、徐々にエキスが染み出し、時を追うごとに印象が変わっていく。小さな魚ならば、胸ビレとカマをセットで。ヒレだけでなく、骨や肉から出る味で相乗効果が生じ、贅沢さも満足度も増す。

サンマの骨酒の楽しみ方

57-05

?炙った中骨は適当な大きさに折って

57-06
?熱燗を注ぎ

57-07
?ラップをかぶせ蒸らすと

57-08
?出来上がり

実は家庭でも作れる

 店主の宇田川大悟さんによると、ヒレ酒・骨酒は家庭でも作れるという。水気をふき取った骨やヒレを、これからの時期ならば風通しのよい場所で干すだけ。網の上に並べ、むき出しのまま冷蔵庫に入れておけば、外気温や虫の対策など気にせず均一に水分が抜け失敗しにくい。「時間をかければ、マグロの中骨も骨酒になる」とか。脂の強い魚は酸化しやすいため、完成後、長期保存の際には冷凍庫を利用するとよい。

 前述の通り胸ビレにはカマをつけ、背ビレや尻ビレは基部を支える部位(神経間棘〈きょく〉・血管間棘)ごと取り出せば、ヒレ・骨・肉の味が一緒に楽しめる。使う魚は好き好きで、「特に向いていないと感じるものはない。いろいろ試して、自分に合う魚を探すのが面白い」と話す。

 日本酒は個性が薄い方が、魚の味が伝わりやすい。あまり熱く燗をつけすぎると、気化した酒で魚の香りが分かりにくくなるため、通常の熱燗程度で。さっと炙り、中骨ならば折って酒に入れ、ラップをかけてしばし蒸らせば、酒は濁らず、ヒレに含まれるアミノ酸ほか、骨髄からもうま味成分が溶け出す。

 「グイっ」と口に含めば、魚のよいダシを肴(さかな)に酒を飲んでいるような。おいしさと不思議さで、思わず笑ってしまう。魚の奥深さを味わい尽くす、楽しい酒宴を。

▲ページトップへ

魚食応援バナー02
ととけんバナー
BACK NUMBER