Vol.84  「築地ワンダーランド」受賞、核心に食育

映画内でのワンシーン。築地の日々の営みを丁寧にとらえている(©松竹)

映画内でのワンシーン。築地の日々の営みを丁寧にとらえている(©松竹)

 築地市場の日常に迫ったドキュメンタリー映画「TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)」(DVD・ブルーレイ発売中/発売・販売元松竹)が昨年暮れ、「クールジャパン・マッチングアワード2017」で「準グランプリ」の新たな称号を得た。遠藤尚太郎監督と、撮影協力の形で支えた水産仲卸でつくる東京魚市場卸協同組合(東卸)の粟竹俊夫広報文化委員長の2人に受賞を機に語ってもらった。

【受賞記念対談】遠藤監督×粟竹委員長

準グランプリのトロフィーと賞状とともに

準グランプリのトロフィーと賞状とともに

■異業種連携の優良事業で表彰された感想を改めて教えてください。

◆遠藤監督/うれしいのはもちろんだが、受賞がもっと多くの日本の方に見ていただけるきっかけになったらと思っている。冒頭シーンのナレーションを英語にしたのは「海外から日本を見つめるような客観性をもって、築地市場をもう一度再確認してほしい」というメッセージでもあったので。

◇粟竹委員長/新たな賞を得たのはやはり日本が魚食の国であるという証明にほかならない。和食が無形文化遺産に登録されたのは和食の中心に魚があってこそだと思う。今回、映画でまさにその部分を取り上げていただいたことに感謝したい。

「日常生活の延長線上に築地はある」と遠藤監督

「日常生活の延長線上に築地はある」と遠藤監督

■公開から1年後の昨年は、DVD・ブルーレイが発売されるなどの次の動きもありました。

◆遠藤監督/16年秋の映画公開時と同じような反応があった。例えば、近く講演でご一緒する料理研究家の土井善晴先生からは、わざわざビデオレターの形でお褒めの言葉をいただき、作ってよかったと改めて感じた。

◇粟竹委員長/DVDはもちろん手元にある。東卸内部では広報文化委員の全員分を調達した。河岸で働いている息子にも見せろとせがまれたよ。映像のプロだから被写体が少しばかりダメでもうまく編集してくれる。

◆遠藤監督/仲卸の仕事は家業で、皆さんは先代や先々代の背中を見て仕事してきた。だから自信に満ちあふれ、りんとした姿、一本筋の入ったたたずまいになるのだと思う。撮影した当時は東日本大震災から間もない時で社会全体に元気がなかったけれど、僕は築地通いで皆さんに元気をもらった。

■1年4か月、映像にして600時間の異例の撮影は、どのように実現をしたのでしょうか。

「日本は魚食の国にほかならない」と粟竹委員長

「日本は魚食の国にほかならない」と粟竹委員長

◇粟竹委員長/長期はめったにないこと。魚食の振興につながる構成にするならば、という条件で承諾した。実際、移転を控える今は、視聴率目当てに築地を撮りたいというメディアばかりで…。

◆遠藤監督/特定の魚種や特定の人物、特定の季節ではなく、市場の営み全体を撮りたいと風呂敷を広げたので、日常業務の邪魔にならないためにはどうしたらいいかといった苦労はあった。

しかし、通い続けるうち築地のリズムが分かってきて、被写体の動きが予見できるようになった。さまざまな人とのつながりの中で情報をもらいながら、軌道修正を図り撮影プランを練ることができるようになっていた。

撮り終えてみて改めて「築地市場はよく分からない」と感じた。全国からあらゆる魚が集まるので、僕のような素人目には、旬も地域性もなく常に同じ魚が並んでいるように映った。よくよく見れば産地は違うし、解禁日がある魚種もあるなど日々違う点がある。一年できょうしか入らない魚もあったりする。築地のスケールの大きさと繊細な奥深さを実感することができた。

■映画終盤には、築地だけでなく魚食普及の出前授業が出てきます。

「TSUKIJI WONDERLAND (築地ワンダーランド)」ブルーレイ(2枚組、6300円税別)&DVD(2枚組、5400円税別)発売中。発売・販売元=松竹 ©2016松竹

「TSUKIJI WONDERLAND (築地ワンダーランド)」ブルーレイ(2枚組、6300円税別)&DVD(2枚組、5400円税別)発売中。発売・販売元=松竹 ©2016松竹

◆遠藤監督/市場と消費者を結び付けるために、いちばん語りたかった部分といえるかも。タイトルは「築地ワンダーランド」だけれど、別世界の出来事ではなく「日常生活の延長線上にあるよ」ということを出前授業やそれに続く学校給食のシーンから感じてほしかった。撮影が進むうちにあれが終盤にくるのが必然になった。

東京五輪まではクールジャパンでいい。ただ、その後に自分たちの文化を見つめ直そうという機運がきっとくる。次回作には、ぜひ食育に焦点を当てた映画を撮りたい。

◇粟竹委員長/自分も出前授業に3、4度おさかなマイスター講師として参加しているが、短い時間でも子供たちに魚を好きになってもらえる本当にいい取り組みだと思う。

今回、撮影に協力する代わりに、撮りためた映像から魚食普及になるビデオ映像の制作をお願いしている。出来上がった暁には、都内の学校という学校に配り、出前授業のように魚食浸透に役立てられればと考えている。

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