<魚食にっぽん>[95]カツオ節の幸福、渋谷に専門店

2018年12月25日

削りたてを貫き、カツオ節と向き合う永松さん

 もの言えぬカツオ節に代わり、その魅力を伝える「かつお食堂」が開店して1年が過ぎた。店を切り盛りする永松真依さんは「カツオ節伝道師」のかたわら、同店でカツオ節が主役の定食を提供している。渋谷・道玄坂上という立地で、若い客層にもカツオ節が受け入れられるのはなぜか。
 店舗はカウンターのみ8席で、朝?昼にかけての時間に、夜開店のバーを間借りして営業している。人気メニューの「かつお食堂ごはん」は本枯節を削ったカツオ節ご飯に、カツオだしを使った味噌汁とだし巻き卵、ぬか漬けが付く。カツオ節はご飯に崩れんばかりの山盛りで、カツオだし醤油で味をつけ、半分ほど食べたら“追いカツオ”のサービスも受けられる。
 一人でやりくりの慌ただしい店内だが、永松さんは手間のかかる「削り」の作業を、ご飯一膳ごとに客の目の前で行う。「削った瞬間から香りが落ちる。節も鮮魚同様に鮮度が問われる」ためだ。
 店内にはカツオ漁の操業風景を収めたDVDが流れ、関連書籍やグッズも揃う。漁業者や漁村、“今月の節”を作った生産者の紹介など、食材に込められた愛情を、永松さんがきちんと伝えることで、よりおいしい料理へと昇華させる。最近はOLや渋谷を拠点とするクリエーターも多い。若い人たちが「カツオ節ってこんな味なの」と驚き、友人を誘って再び足を運ぶことも少なくないそうだ。[....]