<調査捕鯨基地ルポ>鮎川、クジラに託す地域再生

2018年3月30日

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「沿岸の商業捕鯨再開はわれわれの悲願」と語る伊藤社長

 隔年開催の国際捕鯨委員会(IWC)総会が今年9月にブラジルで開かれる。国内には北海道・網走、函館、宮城・石巻市鮎川、千葉・南房総、和歌山・太地などIWC管轄外の小型鯨類を獲る沿岸小型捕鯨の拠点がある。東日本大震災で甚大な被害を受けた鮎川浜の今の様子を鮎川捕鯨の伊藤信之社長らの話を交え、各地で域産業と伝統の継続に取り組む姿を紹介する。
宮城・石巻市内から車で約1時間、牡鹿半島の先端に捕鯨基地として隆盛を極めた鮎川浜がある。1982年の商業捕鯨モラトリアム採択後も沿岸のツチクジラ漁や鯨類調査の基地として捕鯨が続く。

 商業捕鯨再開の見通しがなかなか立たない中の、2008年4月。同地区を拠点とする捕鯨会社が統合し、地域に根差し、この地の捕鯨の歴史を残そうと「鮎川捕鯨」が設立された。伊藤信之社長は2年前に2代目社長に就任。11年3月、東日本大震災が発生。海岸一帯の施設や日本鯨類研究所鮎川実験場と収蔵されていた貴重な資料類、鮎川の象徴でもあった「おしかホエールランド」をはじめ、同社も倉庫の骨組みを残し、事務所など家屋すべてが失われた。

「地域のためにも一刻も早い復興を目指した」と振り返る伊藤社長。沿岸の商業捕鯨再開はわれわれの悲願。地元の人と一緒にクジラを前面に、できることを一つひとつやっていきたい」と語る。[....]