<全国交流大会>JF尾鷲梶賀ルポ/「あぶり」再発見

2018年3月2日

 身の回りに実はたくさんある宝物を地域の人が掘り起こし、よそ者が評価することで初めて「あれは宝物なんだ」と気付くこともある。三重県尾鷲市梶賀町は当地にしかない宝を見つけ、磨き上げた。

サクラやカシの木を燃やし、その遠火と煙で魚を長時間いぶす梶賀町の伝統食「あぶり」。干物ではなく、焼き魚の味とも異なる。その製法から燻(くん)製に分類されるそうだが、イメージする燻製とも違う。では「あぶり」とは何なのか。尋ねてみたすべての人に「あぶりは“あぶり”」と言われた。 
大きなサバやソウダガツオならば、2時間以上もあぶって水分を抜き、味を凝縮させる。その工程で魚体に火が通り、燻製香がまとわりつく。いわば干物と焼き魚と燻製の“いいとこ取り”か。定置網などで獲れた魚の保存食として、漁師町の梶賀では各家庭であぶりを作っていた。

 20年ほど前、テレビ番組で紹介された反響から、梶賀独自の食文化だと知った。2009年に包装を2009年に包装真空パックに変え賞味期限は冷蔵庫保存で1か月に伸び、市内の地場産品直売所や観光施設で常設販売が始まった。11年に市の通販「尾鷲まるごとヤーヤ便」での扱いも開始。古民家を改装した交流拠点「網元ノ家」も開設された。[....]