[942]生物多様性条約第11回締約国会議(COP11)について

2013年2月18日

 平成24年10月、インドのハイデラバードにおいて、生物多様性条約第11回締約国会議(COP11)が開催され、172の締約国、関連機関、NGOなどから約9000人が参加しましたので今回はこの内容についてお知らせいたします。

 海洋・沿岸の生物多様性に関する主要な議題としては、生態学的・生物学的重要海域(EBSA)についての議論がありました。

 EBSAについては、20年のCOP9において、唯一性・希少性、種の生活史における特殊性、絶滅危惧種などの生息地、脆弱性、高い生産性、生物の多様性、自然性といった科学的基準が採択されており、22年に名古屋で開催されたCOP10以降、EBSA基準を満たす海域を抽出するワークショップが各地域で開催されています。

 このうちCOP11には、南西太平洋、中西部大西洋、地中海3地域のワークショップのレポートが提出されましたが、これらの地域で抽出された海域には、南太平洋公海上の海山群を大きく囲い込んだ海域、サルガッソー海、地中海のバルセロナ沖やレバノン沖のようにクロマグロの産卵場となっている海域などが含まれていました。

 COP11では、このレポートの扱いについて議論を重ねた結果、
 ・EBSA基準の適用は科学的技術的試行であることに留意しつつ、
 ・最終的なEBSAの特定およびその保全管理措置の選択は、各国や権限ある国際機関が行うことを前提として、
 ・国連の公海海洋生物多様性非公式作業部会、各国および関係国際機関などに提出することを決定しました。
 このように、EBSAは科学的な参考情報であって、直ちに規制などに結びつくものではありませんが、EBSAとされた海域は、海洋保護区などの規制や保全管理措置の強化を求める声が高まる可能性があります。

 実際、サルガッソー海については、地域漁業管理機関において、EBSAを根拠として、海洋保護区にすべきとの議論が行われています。こうした背景もあって、COP11の議論の中では、EBSAの影響力をより高めようとする動きも見られました。

 次回のCOP12は、26年に韓国で開催が予定されています。今後、北太平洋をはじめとする残りの地域でも、順次EBSAのワークショップが開催され、COP12までに世界全体でEBSAの検討が進められていくことになります。

 また、我が国EEZ内については、環境省が25年度までの計画で、EBSAの抽出を「重要海域抽出検討会」で進めています(公開)。今後はこうした動きにも注視しながら、海洋の生物多様性保全と持続可能な漁業の両立に向けて取り組んで行く必要があります。

(水産庁漁場資源課生態系保全室)