[4]市場もいろいろ(後編)

2013年12月5日

 産地市場業務の流れは、搬入→選別→計量→配置→セリ→搬出である。例えば、10人の漁業者が5種類の魚を搬入し、それぞれに野〆と活魚があるとする。そうすると計量は10×5×2=100回で、配置も100区分し、その単位でセリを行うのが、熊野漁協の方法であった。私が鳥羽磯部漁協石鏡支所の方法を見た時の驚きは、一品ごと注文し、テーブルに運んで来てもらう食堂しか知らなかった人間が、初めてバイキング料理店を見たようなもの。

 熊野漁協は男性職員6人、石鏡支所には男性と女性の計2人のみ。どうするのかと見ていたところ、時間になると漁業者が集まり、自分以外の魚も含め選別や配置作業を手伝い始めたのである。職員は計量と配置の指示に専念している。

 次に驚いたのは、漁業者別、魚種別に計量するまでは同じであるが、その後の配置を魚種単位で一括したこと。この方式では、魚種ごとの漁業者の価格は皆同じとなる。実際は数十?単位を超えると分割するが、配置区分割とセリの単位がこれで大幅に少なくなる。さらに驚いたのは、活魚槽内に熊野では「野〆」に区分される白い腹を見せて泳ぐ魚が少なからず見られたこと。実はこの峻別が難しく時間も要することから、そこを大まかにできれば作業が格段に速くなる。

 しかし、大きな疑問が次々とわいてきた。?統一価格では、魚を粗雑に扱う漁業者が生じないか?大きな単位でのセリだと少量欲しい仲買人が困らないか?死にそうな魚が活魚では文句が出ないか?である。その質問に対し、?漁業者の相互監視でひどい魚ははねる?仲買人間で譲ってもらう?仲買人は過去の経験則から歩留まりを推定する、とのこと。

 人生も市場もいろいろ。物まねではうまくいかない。しかし、なぜ熊野漁協の市場事業が赤字なのか、どうすればよいのかを考えるにおいて、自らを他と比較することで、多くの発見があることだけは間違いないと思う。