<震災復興・防災特集>非常時に威力発揮、釜石業無線局

2017年3月10日

「漁業無線局がこれ以上減って緊急時に対応できるか」と問う東谷局長

 東日本大震災の発生で、くしくも漁業無線は大規模災害時にも広く活用できることが示された。岩手県の釜石漁業用海岸局が震災直後、一般の通信インフラが途絶えた状況でも漁業無線で外部との交信手段を確保し、地域住民の安否を確認する情報を発信、救助要請を果たした。

 震災の発生直後、釜石漁業用海岸局の周辺は道路が寸断され、陸の孤島となった。固定電話やインターネット回線の通信ケーブルは破断され、携帯電話もつながらない。「大地震です。津波に注意。各船直ちに避難」。同局の東谷傳(つたえ)局長は、眼下に広がる釜石湾の状況を目視しながら各船へ、漁業無線で航行注意を呼び掛けた。しかし到達した津波は、想像をはるかに絶する強大なものだった。

 陸上の局周辺にも被災者は多く、「何とか状況を伝えなければ」との思いから、世界共通の国際遭難周波数2182キロヘルツで「誰か聞いてませんか」と呼び掛けた。
 東谷局長はこの時、電波法違反による処分も考えたという。電波法で漁業無線の陸上施設間通信は、目的外利用にあたる。それでも「私が責任をとればよい」とマイクを握った。
 やがて千葉県漁業無線局が応答、茨城県水産試験場漁業無線局も続き、両局が固定電話で岩手県庁へ伝言、県災害対策本部への連絡手段を確保できた。「みんな聞いているよ」の声がうれしかった。
 図らずもアナログの無線通信である漁業無線の優位性が、震災で再認識された。
東谷局長は震災後、地震の頻度が増えたことで、フォローすべき情報量が圧倒的に増えたと話す。[....]