水経セミナー

[22]ウェッジに楔を

2014年9月4日

 皆さんの中にも読まれた方がいらっしゃると思うが、「魚を獲り尽くす日本人」なる衝撃的な見出しを掲げた雑誌「ウェッジ」8月号が出版された。この雑誌は実質上、JR東海の機関誌との位置付けにあり、その内容がIQ・ITQ推進派の主張に偏向したひどいものだったので、「嘘ばかり書くな!」とJR東海の社長あて抗議文を送りつけた。ご丁寧にご回答いただいたが、その内容は、同誌は「社会・経済等について建設的な提言や主張を掲載」「取材活動等により得られた事実に基づき適切な記事内容に努めている」と、反省の色全くなし。

 それにしても、新幹線という公共交通機関を運営する公益性の高い企業が、なにゆえ嘘で日本漁業者を誹謗中傷するような記事を書くのか、不思議だったので調べてみた。どうも、国鉄民営化において功績のあったK名誉会長の「規制改革大賛成」の個人的政治思想が編集方針に色濃く反映されているようである。
 偶然時を同じくし、「ニューズウィーク日本版」(8月26日号)も、「地球を壊す海の病」という見出しで水産資源の特集を組んだ。

 そこでは、温室効果ガスによる「海の酸性化」が海洋生物に与える深刻な影響を指摘している。これは、あくなき「経済成長」を追い求める規制改革路線への警鐘ともいえる。
 また、ITQ推進派が絶賛する米国で導入された「キャッチ・シェア」について、「資源と漁師を守るはずの管理システムが、外国による漁業権取得を増加させている。このままではアメリカの消費者も窮地に」とし、漁師は小作人になり、今より低い収益しか挙げられなくなる、漁業界からウォール街に大金が流れる、としている。

 同じ雑誌といえども、その記事の質は、まさに「月とすっぽん」である。
 新幹線という公共性の高い空間で、個人的政治思想を押しつける雑誌を、グリーン車では無償配布、普通車では独占販売するという公私混同体質には、疑問を抱かざるを得ない。くさびを打ち込まれるべき対象は、雑誌「ウェッジ」そのものではないか。