水経セミナー

[25]いよいよ復活へ萌芽か

2014年10月31日

 私が水産庁に入庁したのは、ちょうど米・ソによる2百カイリ宣言が行われた年であり、その後の日本漁業は、輸入水産物の急増もあり苦難と衰退の連続であった。
 約40年間それに「慣れっこ」であった私は、先般小田原市で開催された「相模湾の振興に関するシンポジウム」で発表された相模湾西部の定置網に従事する95人の年齢構成表に、思わずわが目を疑った。それは20代がピークで高齢に向けだんだんと減少していく、いつもの高齢に向け増えていくそれとは全く逆のグラフであった。こんな明るい気持ちになったのは初めて。

 新規参入者には「脱サラ組」も多いようで、都市部のブラック企業で働くより、人間らしい生活ができる漁業を若者が選択し始めたのかもしれない。目安として年収400万円が保証できれば、奥さんのパート代も含め子供を大学に行かせる人生設計も見通せるとの説明もあり、年収200万円そこそこで若者を使い捨てる労働者派遣法を促進してきた規制改革会議の委員に、演者の「爪の垢」を煎じて飲ませてやりたくなった。

 自由貿易の推進と国内規制緩和が招いたデフレ不況で魚価低迷にあえいだわが国漁業が、同じくそれが招いた他産業の賃金低下ゆえに、新規参入者が増えてきたとすれば、何とも複雑な気持ち。

 資源は確実に回復している。新規参入者も確保できる。これで漁業復活の2条件は萌芽し始めた。あとは魚価回復である。私のひそかな期待シナリオは、国債が売れ残り、金利も上昇、急激な円安とインフレが進行。燃油も高くなるが、それ以上に食料品が高騰。20年間にわたり漁業を苦しめた規制改革路線が行き詰まることで、相対的に国内の食料産業の漁業が浮上というもの。

 ただし注意すべきなのは、何の成果も出なかった規制改革会議がやけくそになり「岩盤規制の撤廃」と称し、IQ・ITQや特区制度で、漁師から資源や漁場を横取りしようとしていること。せっかくの復活の芽を「トンビに油揚げ」とならないよう守らねば。